衣料品の大量廃棄は、深刻な環境問題となっている

捨てられる服はどうなっているのか?

捨てられる服は、事業者や家庭から排出される衣類や、小売店やリユースショップから下取りされた衣類などです。日本国内では、2020年の新規供給量81.9万トンの約9割に相当する78.7万トンが排出されており、そのうち51万トンが廃棄処分されています。
自治体によっては、資源ごみとして回収された服を無償で引き取る場合があります。回収された服は、業者などに引き渡され、中古衣類としてリユースされたり、海外に輸出されたり、ウエス(工業用ぞうきん)のような物に再利用されたりします。また、繊維メーカーは小売店からの下取り品やリユースショップからの売れ残り品も回収しており、国内で販売されたり、海外に輸出されたりします。


回収された衣類は世界中に捨てられる

輸出された衣類は、世界中に送られますが、特にアフリカに多く行き着きます。ガーナのアクラにあるカンタマント市場には週に1500万点の商品が届きますが、そのうち40%は品質が悪かったり、傷んでいたり、ガーナの気候や暮らしに合っていないため、ほぼ即座に埋め立て地に送られてしまいます。また、パキスタンやインド、マレーシアなどにも輸出され、買い取り手がなかった場合はさらに別の国に輸出されることになり、最終的に誰にも買われなかった衣服がチリのような場所に集まるとみられています。

衣類から衣類にリサイクルされるのはわずか1%

最近では多くのブランドや企業が回収した衣類のリサイクルや、再生素材について語っていますが、実際のところ衣類のリサイクルの現状はどのようになっているのでしょうか?
環境省の調査によると、国内で廃棄される衣類の約34%はリユースやリサイクルを通じて再活用されており、年々その割合は高まっていますが、改善の余地はありそうです。
リサイクルされる量は約15.6%、リユースされる量は約19.6%で、残りの約64.8%は焼却されています。リサイクルされた衣類のうち、衣類から衣類にリサイクルされるのはわずか1%程度です。また、リサイクル率は古紙などと比較しても圧倒的に低く、その大きな理由は、回収される衣類の約65%が2種類以上の繊維を含む混紡素材で構成されていることが挙げられます。繊維製品の高機能化のため、複数の繊維が複雑に絡み合っており、単一繊維の素材でしかリサイクル技術が確立していないことが原因です。また、再生事業を広げるには、繊維ごとに分離して再生する技術の確立やコスト上の課題を乗り越えることも必要です。
さらに、衣料品として広く普及させるには「デザイン性との両立」も課題となります。
ファストファッションなどの安価で大量生産・販売される衣服が広まったことで、一着あたりの価格は低下傾向にあり、国内における衣類の供給量は増加しています。それに伴い、衣類のライフサイクルは短くなる一方です。


リサイクルしやすい繊維とは?

リサイクルしやすい繊維には、ポリエステルやナイロン、木材パルプなどがあります。
ポリエステルは、ペットボトルやポリエステル素材の製品を回収して繊維として作り直した再生原料を使用したもので、リサイクルポリエステルと呼ばれます。再生原料を使用することで石油の使用量を減らし、ごみから排出されるCO2を削減できるため、環境に優しいサステナブルな繊維です。リサイクルポリエステルは、耐久性や伸縮性が高く、形状安定性に優れているためシワになりにくく、型崩れを起こしにくいのが特徴です。また、吸湿性が低く速乾性が高いので、サラサラとした肌触りとなっています。光を透過しづらく、紫外線を防ぐ能力を持っているのも大きなメリットです。
ナイロンは、使用済みナイロン製品を回収してケミカルリサイクルで繊維原料に再生することができます。
木材パルプを原料としたリヨセル(テンセル™)も、環境に配慮した素材として注目されています。繊維の断面が円形であることから強度が高く、湿潤時の収縮や強度の低下が少ない繊維です。また、溶剤を回収して再利用するため、廃液が環境中に放出されず、地球にも優しいエコロジカルな繊維です。

衣類は貴重な資源で無限の可能性を秘めいている

私たちは、毎日着る洋服を当たり前のように思っているかもしれません。しかし、洋服を作るためには、たくさんの自然の恵みと、人々の手間と工夫が必要です。綿花を育てるための水、羊毛を紡ぐための技術、そしてデザインや縫製など、洋服には多くの人の思いが込められています。

昔は、洋服はとても高価なものでした。そのため、簡単に捨てることができず、子ども服にリメイクしたり、はたきや雑巾として再利用したりするなど、長く大切に使われていました。

近年では、そんな洋服の大切さを改めて見直し、古着に新たな命を吹き込む取り組みが注目されています。デザイナーたちは、古着を解体し、組み合わせて、全く新しいデザインの洋服を作り出しています。パッチワークのジャケットや、スカーフとヴィンテージのブランケットを組み合わせたようなユニークなアイテムは、古着に新しい魅力を与え、私たちのクローゼットを彩ります。

この動きは、世界中で広がっています。特に、古着の大量廃棄問題を抱える国々では、デザイナーたちが古着を再利用し、新たな価値を生み出すことで、環境問題への取り組みにも貢献しています。ウガンダ発のブランド「ブジガヒル」のように、古着を再デザインし、世界中に販売することで、この問題に対する意識を高めているブランドも存在します。

洋服は単なる衣服ではなく、貴重な資源であり、無限の可能性を秘めているということです。古着を再利用することは、環境保護だけでなく、私たちの創造性を刺激し、新たなファッションを生み出すきっかけにもなります。
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